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*2003年元旦 国内線1日移動日本記録樹立の旅 高橋泰 (3)

 羽田から北の空は晴れており、房総半島、霞ヶ浦、水戸・日立、福島空港、郡山や太平洋岸の原子力発電所、仙台空港、松島、牡鹿半島、三陸のリアス式海岸などを飛行機の窓に額を摺り寄せながら、ただボーと眺めていた。
元旦の東北地方は雪化粧状態であり、初春の柔らかい光に照らされ美しかった。

 飛行機が釧路に到着したときは、既に日は暮れていた。
急いで空港の外に飛び出すと、照明に照らせた雪が白く光る銀世界であり、外気はピリピリと皮膚を刺激する氷点下6度であった。
5時間半前にいた碧(みどり)のサンゴ礁の島"石垣"とは、ちょうど30度の気温差である。
日本は、思いのほか広いことを実感できた。

 次は、釧路から福岡への旅だ。もう夜のフライトである。
さすがに身体がくたびれてきたせいであろうか、飛行機の狭いシートに横たわりながら
「なんで、こんなことやっているんだろう」などという否定的な思いが頭をよぎる。
ちょうどその頃、先ほどのフライトアテンダントの阿部さんが、ANAのポケモンカードに励ましのメッセージを書いて持ってきてくれた。
かわいい女性からカードを貰うと、また身体も心もお元気モードに戻った。

 夕刻7時頃に羽田に戻り、急いで本日6回目の7時15分発ANA265便福岡行きに乗り込む。外を見ても何も見えないので機中では本を読んでいた。21時福岡着。

福岡から私と同じく東京へ戻る方が一名おられた。
この方も飛行機のことが詳しく、「国内線は飛行機の機体を長持ちさせるために国際線と比較して室内の与圧が低く、そのため疲れやすいんですよ。」などという薀蓄(うんちく)を多数語ってくれた。
「なるほど、これまでの飛行時間の総計はロンドンへ飛ぶときとそれほど変わらないのに、身体の疲労感は確かに今回のほうが格段に大きいですね。」などと返答した。

 このような話に感心していると、「全日空990便で東京へ向かわれる高橋泰様」と呼び出しがかかる。出て行くと本日の飛行の証明書が用意されていた。
夜の9時30分に福岡支店長代理の方より記念品を添えて証明書を授与された。
全日空の広報にお願いしたことが、実現したのだ。
やはり駄目もと精神で、希望することは言ってみるものだ。
元旦の日本記録の良い記念品が手に入った。

 このとき私は年末に作成した年賀状の文面に間違いがあることに始めて知った。
私は1マイルを1.608キロと計算していたのだが、飛行機の国際海上マイルを用い
1マイル=1.852kmなのだそうである。
私は、年賀状に示した7560kmではなく、実際は1日で8713km飛ぶことになるらしい。
計算間違いを正していただいたおかげで、日本記録が1153km伸びた。
21時35分羽田を目指しANA744便は福岡をあとにした。

 23時羽田に到着。
お金もあまりかけず、修行も行わず、非常にお手軽に日本記録樹立の瞬間でもあった。
これ以上お手軽な日本記録もそうないだろう。
また、日本の広さを十分に満喫できた。

 家に帰ると、「今日一日テーブルの上に高橋さんからの年賀状を置き、今どこに居るのかを確かめながら一日を過ごした」というような内容のメールが何本も届いていた。
今年も、面白い年になりそうである。